PRP療法について
血液に含まれる血小板は「成長因子」という、細胞の成長や増殖、修復を促進する物質が含まれています。その作用を利用した治療方法を多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)療法(PRP療法)といいます。PRPは「Platelet Rich Plasma」の頭文字からとられています。
この治療法は、患者さんの血液から血小板を多く含むPRP(多血小板血漿)を抽出して、患部に注入する治療法です。最近では、プロスポーツ選手の治療や、美容治療(アンチエイジング)で導入されています。
成長因子が周囲の細胞に働きかけることで、身体が傷ついた組織を自力で治癒しようと動きます。治療時の痛みが少ない上に、早期治療にも役立つ治療法です。
なお、日本国内では、再生医療を行うにあたって届け出が義務付けられており、当院は細胞培養加工施設としての認可を受けています。(細胞培養加工施設番号FC3180050)
また、再生医療学会認定医も在籍しておりますので、安心して治療を受けられます。
PRP:患者さんご自身の血液を採取し、院内で遠心分離機と特別な器材を用いて作成いたします。作成時間は約15-20分程度で、その場で治療が受けられます。最も多く用いられている方法で、良好な成績が報告されています。
PFC-FD(Platelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dry):患者さんご自身の血液を採取し、提携の血液加工センターで血液を加工、成長因子のみを取り出し注射します。加工のため採血より通常3週間の期間を要します。成長因子に特化しているため、通常のPRPで効果の薄かった方にも、有効な可能性があります。
PRP療法の特徴
自己修復機能の促進
血小板に含まれる成長因子の機能によって、患部の自己修復機能が促されます。
患者さんの血液を使用するオーダーメイド療法
患者さんご自身の血液をもとに抽出した成長因子を活用する治療法です。
自分の血液を利用するので、アレルギーなどの免疫反応のリスクは非常に少なく、
副作用やリスクを避けられる治療なので、一般の方はもちろん、ご高齢の方やプロスポーツ選手の方にも安心してご利用いただけます。
手術なしで治療可能
PRP療法は注射のみの治療なので、手術の必要はありません。PRPは自分自身の組織のため、感染症や拒絶反応の危険性が少なく、また、処置は採血と注射のみのため、侵襲の低い治療法です。通常は施行後の安静も不要です。そのため、仕事を休めない方、手術を極力避けたい方、すぐにスポーツに復帰したい方(プロスポーツ選手など)にお勧めできる療法です。
成長因子の働き
血小板の中には、以下の力を持つ成長因子が含まれています。
- 炎症を抑える抗酸化作用を持つ成長因子
- 自己修復に必要な細胞増殖を促進させる成長因子
- 骨や血管を作るのに必要なコラーゲン産生を促進する成長因子
- PDGF (platelet-derived growth factor)
細胞増殖、血管の再生・修復、マクロファージ活性化、コラーゲン産生 - VEGF (vascular endothelial growth factor)
血管内皮細胞の増殖・新生 - TGF-β (transforming growth factor β)
上皮細胞・血管内皮細胞増殖 - EGF (epidermal growth factor)
上皮細胞の成長促進 - FGF (fibroblast growth factor)
組織修復・コラーゲン産生・ヒアルロン酸産生
PRP療法が効果的な症状(一部記載)
膝の痛み・変形性膝関節症
変形性関節症は進行すると変形だけではなく、「軟骨の消耗」、「半月板損傷」「関節水症(膝に水がたまる)」「滑膜炎」なども起きます。PRP療法では、このような組織の損傷を抑制したり、関節炎を抑え関節の症状を抑制したりする効果があります。
従来の変形性関節症の治療では、主おもに、薬物療法(鎮痛剤の服用)やヒアルロン酸注射などを中心に行いました。しかし、そのため、従来の治療方法を行って改善されなかった方でも、PRP療法で痛み・炎症が改善される可能性があります。
スポーツ外傷(テニス肘・ゴルフ肘・ジャンパー膝)
PRP療法は手術を行わないので、プロスポーツ選手やスポーツを趣味にしている方、部活動を行っている方などのスポーツ外傷・スポーツ障害の治療でも活躍します。患者さんの血液を活用しているため、ドーピングに該当しないのでご安心ください。
肘内側・外側上顆炎(テニス肘・ゴルフ肘)やジャンパー膝(膝蓋腱炎)、アキレス腱炎・足底腱膜炎(腱付着部症)や肉離れ、筋・腱断裂、靱帯損傷などの治療に用いられます。
PRP治療の効果
効果・持続期間にはもちろん個人差がありますが、だいたい1週間〜6ヶ月で組織修復がはじまります。そして治療後から2週間〜3ヶ月までに、効果が現れる・自覚できるようになります。自己治癒能力を活用した治療方法なので、長期間での治療効果が認められます。また、繰り返し治療を行うことも可能です。
治療の流れ
PRP
1
まず診察を行い、PRP治療の適応がある場合、PRP療法の説明を行います。
2
1部位につき、約20mlの採血を行い、特殊な機械を用いて、PRPを作製します。
3
約2-4mlに調整した、PRPを患部に注射して、治療終了です。施行後に特別な安静も必要ありません。
PFC-FD
1
PRPと同様に診察を行います。
2
約50mlの採血を行い、提携の血液加工センターで検査・加工を行い、成長因子を抽出したものを患部に注射します。
3
加工のため通常約3週間必要です。凍結保存されているため、加工から約半年以内のご都合の良いときに注射することが可能です。施行後に特別な安静は必要ありません。
費用について
PRP療法は、日本ではまだ保険診療の対象外のため、自費診療扱いとなります。種類 | 費用(税込) |
---|---|
PRP 1部位 | 1部位55,000円 |
PFC-FD 1部位 |
1部位132,000円 |
よくある質問
PRP治療では手術を行いますか?
PRP治療は患者さんの血液から抽出した成長因子を、肘・膝などの患部に注射するため、手術は行いません。注射は5分程で完了します。
高齢でも治療可能ですか?
PRP療法は手術を行わないので、高齢の患者さんにお勧めします。
年齢による制限はございません。手術を勧められている方でも痛みを軽減することで通常の生活に戻れる可能性があります。また、手術の時期を遅らせることができることもあります。当院では、手術を必要とされる患者さんに対し、順天堂大学順天堂医院、慈恵会医科大学をはじめ、適切な高度医療機関を紹介しております。お気軽にご相談ください。
副作用はありますか?
患者さんご自身の血液から抽出した成長因子を注入するため、副作用が少ないことが大きなメリットです。
ただし、一般的によく起きる注射後の副作用(痛みや腫れなど)が発生する可能性はあります。
どれくらいの回数を行う必要がありますか?
どれくらいの回数を行う必要がありますか?
変形性関節症などには効果を見ながら、1カ月毎に1-3回行います。一度経過を見て疼痛が再発する場合、半年後に再度1-3回施行するケースもあります。
PRPによる治療は特に回数の決まりはありませんので、症状に応じてご相談させていただきます。
PRPとPFC-FDの違いは?
PRPは多血小板血漿、PFC-FDは血小板由来成長因子濃縮液を注射します。どちらも血小板由来の物を投与します。PRPは比較的歴史も長く、有効性と安全性の報告が数多くあります。その場で投与可能な事、初回の治療費が安価なこともメリットです。
PFC-FDは新しい治療で、まだ研究段階ですが、PRPと同等かそれ以上に良好な成績も報告されています。凍結保存により、量によって複数の部位や複数回投与できるので、初期費用は高額ですが、複数回接種する場合1回あたりのコストは抑えられます。また、成長因子に特化しているため、通常のPRPで無効だった方でも有効な事があります。
逆にPFC-FDが無効だった方でPRPが有効な可能性もありますので、部位や症状などによってご相談いたします。
ご不明な点は、まずはお電話にてお気軽にお問合せください。 ご予約もお受けしております。