テニス肘・ゴルフ肘(上腕骨外側上顆炎、上腕骨内側上顆炎)

上腕骨外側上顆炎(テニス肘・ゴルフ肘)とは

上腕骨外側上顆炎は別名「テニス肘」、上腕骨内側上顆炎は「ゴルフ肘」と言われますが、実際には労働により起こるものが圧倒的に多いです。テニス肘といわれる所以はテニスのバックハンドで発症し、テニスプレーヤーの30%~50%が経験すると報告されているからですが、ゴルフが原因でも上腕骨外側上顆炎(テニス肘)になるケースも多数あります。
肘の外側、内側の筋肉を長期間使い続けたことが原因で、肘から前腕にかけて炎症・痛みが起きる病気です。
よく「テニス肘」と呼ばれていますが、バドミントンやゴルフ、卓球、剣道など、肘や手首を酷使する競技ではよく見られます。他にも家事、大工作業、最近ではパソコンのタイピングやスマホの操作が原因で、発症するケースもあります。

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の原因

肘の外側には、手首を甲側に動かす(背屈)ための長橈側手根伸筋(ちょうとうそくしゅこんしんきん)・短橈側手根伸筋(たんとうそくしゅこんしんきん)と、指を曲げ伸ばしするための総指伸筋(そうししんきん)の付着部があります。中でも短橈側手根伸筋:ECRBの腱の部分に、炎症が発生しやすいと言われています。筋肉は腱に変化し、骨に付着しますが、この部分は異なる組織が接着しているため、enthesis(付着部)と言われ、炎症の好発部位となります。上腕骨外側上顆はちょうどその部位になります。
テニスやゴルフなどのスポーツ、大工作業、家事などで同じ動作を繰り返し、肘や手首に負荷をかけ続けることで、この腱の部分に炎症が起きて痛みが生じます。

上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)の原因

肘の内側には、手首を手のひら側に動かす(屈曲)ための橈側手根屈筋(とうそくしゅこんくっきん)・尺側手根屈筋(しゃくそくしゅこんしんきん)と、手首を曲げるための長掌筋(ちょうしょうきん)の付着部があります。テニス肘と同様にこれらの付着部に負担がかかることで炎症が起こります。手首を曲げる筋肉が多く関わるので、重いものを持つなどでも痛みを生じます。

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)・上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)の症状

スポーツや動作時に痛みが起きることが多く、安静時の痛みは少ない傾向にあります。慢性化すると「物を掴んで持ち上げる」や「タオルや雑巾を絞る」、「ドアノブや蓋を回す」「パソコンのキーボードを操作する」など、些細な動作を行うだけで痛みが発生してしまいます。

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)・上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)の検査方法

炎症が起きる病気なので、レントゲン検査(X線検査)だけでは骨の異常を確認することができません。しかし重症化すると稀に「腱の石灰化(カルシウムが腱にたまる現象)」をレントゲン検査で発見されることもあります。また、超音波検査(エコー検査)やMRIで炎症・損傷の状態を調べることも可能です。当院では、超音波検査も行っております。筋肉・靭帯の状態、炎症などの評価ができるため非常に有用です。MRIは提携する医療機関と協力して検査を行っていきます。当院より徒歩5分の画像診断専門の施設と提携しております。
また、レントゲン検査、MRI、超音波検査だけではなく、下記の3つのテストも行い鑑別していきます。

Thomesen(トムセン)テスト(手関節伸展テスト)

患者さんの手首を上に反らし、かつ肘を伸ばした状態で行う検査です。医師が患者さんの手首に上から力を加えたときに、痛みが発生しないかを確認します。

Chair(チェア)テスト

肘を伸ばした状態で椅子を持ち上げ、肘の外側に痛みが起きないかを確認します。

中指伸展テスト

医師が患者さんの中指を上から押した状態で、患者さんが中指を上に伸ばしたときに肘の外側に痛みが発生するかを確認します。

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)・上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)の治療

治療箇所は患部である肘だけでなく、手指や手関節部の安静・保存的療法も行います。テニス肘・ゴルフ肘は薬物療法だけではなく、生活習慣の改善も重要です。

薬物療法

痛みを落ち着かせるために、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)の内用薬・外用薬を服用します。

注射治療

局所に消炎鎮痛剤(麻酔薬やステロイド)の注射を行います。当院では入念な触診と超音波の検査で原因部位を特定した上で注射を行います。
筋肉や組織の固い部分に生理食塩水を注射するハイドロリリースが有効な事もあります。
難治性の症例では、PRP(多血小板血漿)治療も行っております。スポーツ選手をはじめとして有効な成績が報告されています。

理学療法

負荷の集中や筋肉の柔軟性の低下が原因の一つなのでストレッチや筋力アップトレーニングなどのリハビリテーションも重要です。必要に応じて当院でご指導いたします。

生活習慣の改善

ゴルフやテニスが原因の場合はスイングやフォームの改善が必要なこともあります。パソコン作業で痛みが出る場合はキーボードの角度調整や操作時の負荷を緩和する枕(リストレストやハンドレスト)の使用が有効なこともあります。マウス操作で痛みが出る場合は操作はやや難しいですが、トラックボール式のマウスも検討されます。

その他の治療

内服治療などにより改善が見られない場合、必要に応じてその他の治療を行うこともあります。PRP治療は当院でも行っております。体外衝撃波(ESWT)や手術療法は、提携する医療機関と協力して治療を行っていきます。

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