高血圧

高血圧について

高血圧について 人は身体中に血管が張り巡らされており、酸素や栄養を運んでいます。その血管の中を流れる血液が血管の壁を押す力が「血圧」です。名前の通りその血圧が高い状態を「高血圧」といいます。

なぜ血圧が高いとよくないのでしょうか?

日本で行われた福岡県の久山町の研究をみてみましょう。
脳卒中になった人の人口1000人あたりの数を見てみると、
血圧が

  • 120/80未満 7.3人
  • 140/90未満 23.8人
  • 180/110以上 61.7人

と明らかに血圧が高いと脳卒中が増えることが分かっています。
脳卒中以外にも血圧が高いと心筋梗塞や狭心症が増え、様々な臓器に障害が起きることがわかっています。そのため、血圧をしっかり治療することが、将来の健康を守ることにつながるのです。

長い間高血圧を放置していることで、血管が傷んで動脈硬化がおきて、心臓の病気や脳梗塞、そして認知症などになるリスクが増えてしまいます。
20歳以上の成人の2人に1人は高血圧であり、高血圧を完全に予防できるようになれば年間10万人死亡が減らせるという統計もあります。
平均寿命が延びている現在、血管をいかに若く動脈硬化を少なく保てるかは、予後に大きく関わってきます。
高血圧自体は、症状がない方も多く、血圧がかなり上がると肩こり、頭痛、動悸等の症状が出てくる場合もあります。気になる症状がある場合はいつでもご相談ください。
診断基準では、診察室での血圧が 140以上かつ/または90以上の場合、(家庭での血圧は-5mmHg)高血圧と診断します。
国内にいる高血圧の患者数は4300万人ほどで、大変患者数の多い病気です。
高血圧自体は自覚症状に乏しいのですが、放置しておくと心臓・血管病や脳卒中などを引き起こすため、糖尿病と同じように「サイレントキラー」とも言われています。
他の研究では、中壮年者で血圧がⅢ度高血圧のグループは至適血圧のグループに比べて約10倍脳梗塞や心筋梗塞で亡くなるリスクが高くなることが分かっています。
毎年の健康診断などで血圧を定期的に確認して、高血圧の疑いがありましたら一度当院までご相談ください。特に30代、40代の若い方はどうしても治療が遅くなりがちです。けれども若い世代の方ほど人生の残りの時間が長いのでしっかり血管を守っていくことが大切です。「お薬はどうしてもいや」という方も、あるいは、いままで治療をしているけれども目標値までなかなか血圧が下がらないといった方も、お食事、運動療法を含めた様々なアプローチから原因を探して、血圧をきちんと下げていきますのでぜひ一度ご相談ください。

高血圧の種類と原因

高血圧には、①本態性高血圧と②二次性高血圧があります。

本態性高血圧症

高血圧患者の約90%が、「本態性高血圧症」だと言われています。「本態性」というのは、原因がほかの病気によるものではない、はっきりとはわからないということです。本態性高血圧症の主な原因は、遺伝的因子や不摂生な生活習慣など様々な要因が合わさることが挙げられています。そのため、生活習慣病の一つとなります。

本態性高血圧症の原因とは

  • 塩分、油脂の摂りすぎ
  • 過度の飲酒
  • 肥満
  • ストレス
  • 運動不足、睡眠不足
  • ミネラル(カリウム・マグネシウム・カルシウム)不足
  • ヘビースモーカー
  • 加齢
  • 寒さ(冬は血圧が上がる方が多いです)
  • 遺伝的要因(ご家族・親族の中に高血圧患者がいるなど)

血圧を下げる要因とは

反対に血圧が低くなる時があります。

  • 入浴後
  • 飲酒のすぐ後
  • 暑いとき
  • 運動習慣
  • 睡眠
  • 十分な休養

これらの時には普段よりも血圧が低くなることが多いです。

二次性高血圧症

二次性というのは、何か他に原因となる病気があって、そのために高血圧になっている病態です。甲状腺や副腎に病気があり、睡眠時無呼吸症候群に罹患している場合も高血圧となることが分っています。
二次性高血圧をきたす疾患は以下の通りです。

腎実質性高血圧症

腎実質(血液をろ過して尿をつくる役割を担う部位)に何らかの障害が起きることによって、高血圧になってしまうケースがあります。慢性腎疾患を抱えている方は、腎機能の低下によって高血圧にかかりやすいです。
腎臓と血圧は‘鶏と卵’の関係と一緒で、片方が悪くなるともう片方も悪くなりやすいと考えられています。

原発性アルドステロン症

副腎から生成される「アルドステロン」というホルモンが、過剰分泌を起こすことで高血圧を引き起こします。「アルドステロン」は腎臓の上にある小さな臓器である副腎というところから分泌されます。通常は水分や塩分の調整をしていますが、分泌が過剰になると高血圧を引き起こします。副腎にアルドステロンを分泌する腫瘍ができたり、副腎全体からアルドステロンが沢山分泌されることもあります。
当院では、高血圧の方にはアルドステロンを含むホルモンの簡単な採血を行い診断しています。
治療は、アルドステロンが過剰に分泌されている副腎が片方であれば、手術で摘出をします。両方から過剰に分泌されている場合は薬で治療を行います。

腎動脈狭窄症

腎動脈の狭窄(狭くなること)が起きることで腎臓へ血液が流れにくくなる疾患です。原因は、90%以上は加齢による動脈硬化です。10%程度は、比較的若い世代の方に見られる動脈硬化が原因ではなく、繊維筋性異形成症による腎動脈狭窄症です。
治療は血管外科で手術やカテーテルによる治療を行います。

褐色細胞腫

副腎という腎臓の上にある小さな臓器にできる腫瘍で非常にまれな病気です。
交感神経に働きかける、つまり血圧をあげるカテコラミン(アドレナリン・ノルアドレナリンなど)というホルモンを産生する腫瘍が発生する疾患です。胸のどきどきや頭痛、急に汗をたくさんかくなどの症状と同時に血圧が急に上がる発作があることもあります。腫瘍ができる原因は未だ不明ですが、最近褐色細胞腫になりやすい遺伝子があることが分かってきました。血縁関係のある方にこの病気の方がいる場合は検査を受けることをお勧めします。このホルモンによって急激な血圧変動・高血圧にかかりやすくなります。治療は飲み薬と腫瘍の手術による摘出です。

上記の疾患だけではなく、そのほかのホルモンの分泌異常(甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症など)も、高血圧の原因になり得ます。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠の時に何度も呼吸が止まってしまったり、浅くなったりして、低酸素になってしまう病気です。夜に無呼吸があると、睡眠が一時中断状態になり身体は窒息しないように交感神経を働かせて呼吸が再開するように働きかけます。血圧をあげる交感神経が活性化されてしまうため、高血圧の原因となります。
特に若い世代の高血圧の背景には睡眠時無呼吸症候群が隠れていることがよくあります。いまはご自宅で簡単に検査ができますので、「いびき」が気になったり、疲れや眠気が取れない場合は、一度ご相談ください。

必要な検査

高血圧症の診断の際には、必要に応じて以下の検査を実施することもあります。

二次性高血圧症の精査

ホルモン値・腎臓機能を確かめるために、血液検査や尿検査、腹部エコー検査(超音波検査)などで診断します。結果によっては提携先の高度医療機関を紹介します。

高血圧に伴う合併症の精査

高血圧を放置してしまうと、心臓や腎臓、眼、血管などの疾患の発症リスクが上昇します。そのためレントゲン、心電図、血液検査などの検査を実施して、程度を確認します。当院では、必要に応じて提携先の医療機関と協力して検査を行います。
また、家庭血圧計を購入していただいて、毎日の記録をつけていただくことも大切です。当院では外来で手帳をお渡ししたり、アプリの御紹介をさせていただいたりして日々の血圧管理も一緒に取り組んでいます。

治療方法

高血圧症の方は、以下の内容に気を付けて生活を送りましょう。

  • 塩分量を減らす(1日6g未満)
  • 野菜・魚をバランス良く摂取する
  • 運動(有酸素運動)を行う
  • 肥満の方はダイエットを行い、適正体重を目指す
  • 節酒または禁酒
  • 禁煙

塩分を減らすコツ

高血圧の予防には、食塩の摂取量を減らすことが大切です。日本高血圧学会では、高血圧患者における減塩目標を1日6g未満にするよう推奨しています。これはなかなか難しいのですが、外来では、まずは日常生活で少し塩分を減らす工夫を提案しています。具体的には

  1.  漬物類を控える
  2. 汁物は控える 麺類のスープは残すと塩分が1/3程度になります
  3. 調味料はかけない つける ソースやお醤油はかけずにつけると塩分が半分になります
  4. 塩分控えめの調味料を使うようにする
  5. 香味野菜、新鮮な野菜を摂取する:薄味でもおいしく感じます

 等があります。自炊されているかどうか、外食の頻度などで対策が変わりますので、外来でささいなことでもぜひご相談ください。

生活習慣の改善のみでは難しい場合、降圧薬などの薬を処方します。降圧薬の種類・量は患者さんの既往歴・現在服用している薬との飲み合わせを考慮して、選択します。お薬をなるべく減らしたい、お薬は飲むけれど塩分は減らしたくない、塩分の減らし方がわからないなど様々なお悩み一つ一つに寄り添って診療を行います。

血圧の目標値

血圧の目標値は、年齢や基礎疾患の有無によって異なります。適切な血圧(もしくは適正血圧)をキープすることで、合併症リスクの軽減を目指しましょう。
血圧の分類を下記に表示します。参考にしてみてください。

分類 診察室高血圧 家庭高血圧
収縮期血圧/拡張期血圧 収縮期血圧/拡張期血圧
正常血圧 <120かつ<80 <115かつ<75
正常高値血圧 120-129かつ<80 115-124かつ<75
高値血圧 130-139かつ/または80-89 125-134かつ/または75-84
Ⅰ度高血圧 140-159かつ/または90-99 135-144かつ/または85-89
Ⅱ度高血圧 160-179かつ/または100-109 145-159かつ/または90-99
Ⅲ度高血圧 ≧180かつ/または≧110 ≧160かつ/または≧100
(孤立性)収縮期高血圧 ≧140かつ<90 ≧135かつ<85

日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会(編).高血圧治療ガイドライン2019.ライフサイエンス出版:東京,p18, 2019.

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