花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)とは
花粉症でお悩みの方はきっと多いのではないかと思います。
統計によると花粉症により従業員の生産性は40~60%低下するとの報告があります。
確かに花粉症の時期はちょうど3月で忙しい時期にもかかわらず、なかなか仕事が進まないなぁと思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
このように花粉症は国民病といわれるほど、増加傾向にあります。
東京都の統計では、推定有病率は48%とおよそ半分の人が花粉症に悩まされています。
花粉症の約70%はスギ花粉と考えられています。これは日本に沢山スギが植えられているからです。特に関東や東海地方ではスギが中心となり、関西では、ヒノキも沢山植えられているため、ヒノキの花粉症も多いとされています。一方北海道では、スギやヒノキは少なく、シラカンバ属が多いという特徴があります。
花粉症は「耳鼻科に行かないと」というイメージがある方もいらっしゃいますが、内科・アレルギー科でも診察させていただいておりますのでどうぞご安心ください。
さて、花粉症とは、特定の植物(スギやヒノキなど)の花粉が体内に入り込むことで、くしゃみや鼻水(透明でサラサラしている)、鼻づまり、目のかゆみなどの症状を引き起こす、季節性アレルギー性鼻炎のひとつです。春はスギやヒノキ、秋はブタクサやイネ科の植物が原因となることが多いです。
花粉症はくしゃみや鼻水、鼻づまりだけではなく、目のかゆみや充血、異物感なども引き起こします。また、人によっては微熱や頭痛を出すこともあります。
花粉症の初期療法
花粉が飛び始めるシーズンの前(だいたい2週間前)に、花粉症の投薬治療を開始することを「花粉症の初期療法」といいます。治療を早く始めると、花粉症の症状が現れるのを遅らせたり、花粉シーズン中の症状を軽くしたりすることができます。当院では毎年1、2月ごろより治療を開始しております。また、できるだけ花粉に暴露しないように、玄関で上着を脱ぐ、メガネやマスクを着用する等も大切です。
また、近年では通年性アレルギー性鼻炎やハウスダスト、昆虫等様々なアレルギー源があることがわかっております。原因を確かめるための採血検査も行っておりますので、いつでもご相談ください。
花粉症の治療方法
主に「抗ヒスタミン薬」の内服薬を用いた治療を行います。抗ヒスタミン薬を服用することで、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状を落ち着かせることができます。また、鼻づまりが辛い方には、内服薬と一緒に「局所ステロイド点鼻薬」も処方します。点鼻のステロイドは局所的な作用のみで、体にはほとんど吸収されませんので、ご安心ください。
ここで一つご注意いただきたいことがあります。市販の点鼻薬には、「血管収縮剤」の含まれているものが大変多くあります。これは、鼻の血管を収縮させて細くすることで症状を緩和する作用がありますが、この効果は一過性です。数日間のみであればよいですが、この点鼻を長期にわたって連用すると、周りが肥厚してしまい、鼻が詰まる「肥厚性鼻炎」を起こしてしまい、場合によっては手術が必要となる場合もでてきてしまいます。安易に使用されず、ぜひ処方薬をご利用ください。
また、目のかゆみ・ゴロゴロ感などでお悩みの方には、「抗アレルギー点眼薬」または「ステロイド点眼薬」を処方します。
処方された薬は、指示された量や回数、服用方法を必ず守ってお使いください。また、症状が落ち着いた場合でも、医師の指示に従い薬の使用を継続してください。
日常生活でできるセルフケア
「なるべく花粉に晒されない」というのが花粉症予防の基本です。
以下のようなことに気を付けてみてください。
外出する時
- メガネやゴーグル、マスク、スカーフなどを身につけて、花粉から身を守りましょう。
- ウールのニットやニット帽、マフラーなどは花粉が付きやすいため、着用は避けてください。
- 晴れの日、風が強い日は花粉が飛びやすいため、極力外出を控えてください。
- 暴露するほど症状が悪化します。内服して症状が治っている時もマスクやメガネ等で暴露を押さえましょう。
帰宅した時
- 衣類についた花粉を払ってから家に入りましょう。
- 帰宅したらすぐに手洗いや洗顔、うがいをしましょう。
- シャワーを浴びるのも髪の毛についた花粉を洗い流すので有効です。
室内で過ごす時
- 洗濯物は極力外に干さず、室内干しを推奨します。
- 日ごろからテレビやインターネットなどで、花粉の飛散量を調べておきましょう。
- 花粉の飛散量が多い日は窓・ドアを閉め、室内に花粉が入らないようにしてください。
- 部屋の換気は、花粉の飛散量が比較的少ない夜間や早朝に行いましょう。
- 部屋の掃除はこまめに行い、空気清浄機を設置することをお勧めします。
体調管理
- 十分な睡眠時間を確保し、疲れを溜めないように過ごしましょう。
- ストレス発散できる趣味や運動を行いましょう。
- 過度な喫煙・飲酒は控え、栄養バランスの良い食事を心がけてください。
果物アレルギー
ある特定の果物を食べた後に、唇が腫れたり、かゆみがでたり、舌が腫れぼったくなったり、のどがいがいがする症状のことを「口腔アレルギー症候群」(OAS)と言います。通常は全身の症状はなく、口周辺の症状のみが出現します。
中でも花粉症のある方で食物アレルギーがでてくる場合を「花粉―食物アレルギー症候群」といい、近年患者さんが増加傾向にあります。花粉のタンパク質に似た構造の食物のタンパク質を摂取することでアレルギー反応がでてきます。ほとんどの場合加熱すれば、分解され、摂取できるようになります。加熱されているジュースや缶詰ではアレルギーが出ないことが多いです。
どの食物にアレルギーが出るかは、花粉の種類によって異なります。
稀に口腔アレルギー症候群ではなく、食物アレルギーでアナフィラキシーとなる方もいらっしゃるので注意が必要です。
- 果物アレルギーについて 日本アレルギー学会より
https://www.jsaweb.jp/modules/stwn/index.php?content_id=14 - 食物アレルギー診療ガイドライン2016
https://www.jspaci.jp/allergy_2016/chap11_2.html
ラテックスアレルギーについて
ラテックスとは、医療用のゴム手袋や医療用品によく用いられているゴムの1種です。植物の「ゴムの木」から作られるラテックスですが、よくラテックス製品を使用する医師中でも外科医や歯科医、スタッフに発症が多くみられます。「花粉―食物アレルギー症候群」と同じように、ラテックスのタンパク質に似た構造の果物のタンパク質を摂取することでアレルギー反応がでてきます。
このアレルギーがあると、特定の果物にアレルギーがみられるようになることがあります。具体的にはキウィ、マンゴー、バナナ、アボカドなどです。これを「ラテックスフルーツ症候群」といいます。これらの果物は加熱してもアレルギー症状が出ることが多く、食べないことが基本となります。
フルーツを食べた時に口腔内がかゆいな、おかしいなと感じている場合は是非一度ご相談ください。