下痢

「実はずっと下痢気味で、、」
「お腹が緩くて困っているけれど、病院に行っても体質だからしょうがないと思っていて、、」
「わざわざ相談するほどのことでもないかと思って、、、」
下痢でお悩みの患者さんは実は沢山いらっしゃいます。
外来で、何か困っていることはありますか?とお聞きすると下痢の相談であることがよくあります。
下痢をコントロールできるようになると、トイレの場所に困らなくなるのみでなく、腸内環境が整い、体調までよくなることもあります。中には重大な病気があることもありますので、ぜひ一度ご相談ください。

下痢とは(下痢の原因)

下痢は、水分の多い便を頻回に排泄する状態と定義されています。
もう少し詳しく説明をすると一日に200g以上の便をする状態です。
通常、胃から大腸に至るまで、食物や飲料から摂った水分、唾液などの体液を合わせて10リットル程度の水分が流れています。このうち8割程度は小腸で吸収され、残り2割弱が大腸で吸収され、わずかに残った水分が便に含まれて排泄されます。
ところが、この経路のどこかに障害が起こり、水分の吸収に滞りが起こると、水分は吸収されず、そのまま便となって排泄されてしまいます。これが軟便または下痢と言われる状態です。
つまり胃や腸などからの消化液の分泌が多すぎたり、逆に水分の吸収がうまくできないと下痢になります。

下痢の症状

下痢には腹痛や発熱、吐き気、嘔吐を伴うもの、出血が見られるものなど様々な症状がありますが、中には重要な疾患のサインとなっているものもあります。
特に以下のような症状がある方は医師による診療が必要なこともありますので、一度当院までご相談ください。

  • 便に血液が混じる
  • 便にゼリー状の固まりが見える
  • 排便しても腹痛が消えない
  • 腹痛から下痢のサイクルが短く、トイレから離れられない
  • 吐き気や嘔吐を伴う
  • 高熱が出る
  • 喉が渇く、尿の量が極端に少なくなる(脱水症状がある)
  • 下痢が3週間以上続いている
  • 体重が減ってきた

  • 同じものを食べた人が下痢症状を起こしている

など

下痢の種類

下痢が続く期間によって、

  1. 2週間以内の急性の下痢と
  2. 3週間以上続く慢性の下痢に分類されます。

急性下痢症

急性下痢症は症状が2週間以内に治まる下痢のことです。原因の
多くは、ウィルスや細菌による感染によるものです。薬剤の副作用が原因であったり、そのほか環境の変化などのストレスが原因になることもあります。
感染性の場合一般的には、下痢の症状を引き起こすことで細菌や毒素などを体外に排出し、短期間で治ります。受診していただき整腸剤などを内服することで悪化や長期化を防ぐことができます。
一方、だんだん症状が激しくなり、嘔吐や発熱などを伴うような場合は、脱水が進行しており、命にかかわることがありますので、緊急で医療機関を受診する必要があります。特に嘔吐などで給水ができない場合は、しっかりと検査をした上で、点滴などで水分補給を行い、脱水症状を起こさないようにする必要があります。このような症状がありましたら、お早めにご相談ください。

感染性下痢症

感染性下痢症は細菌によるものとウイルスによるものに分かれます。

細菌感染による下痢

腐った食物を食べたり、生肉などから調理者の手に細菌が付き、その他の食材に付着したりといった、いわゆる「食中毒」の多くはこの細菌感染による下痢です。
感染源の細菌としては、サルモネラ菌、カンピロバクター、病原性大腸菌などで、多くは強い腹痛、しぶり腹、発熱、血便や粘血便などの大腸型と言われる症状を起こします。
そのため、便の様子、発熱と激しい下痢による脱水を起こしていないかなど、慎重に経過を観察する必要があります。

ウイルス感染による下痢

感染性下痢の多くがウイルスによるものと考えられています。人との接触などによって起こることが多く、また牡蠣中毒の原因の一つとしてもウイルスが関係しています。
原因となるウイルスはノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどで、多くの例では強度の水様便があり、嘔吐を伴うことが多く、腹痛は軽いか発症しない程度とされ、血便は見られないとされています。なお、こうした特徴を持つ下痢を小腸型と言うこともあります。
ウイルス感染による下痢も、比較的早く自然に治るため、あまり心配いりませんが、しばらくはウイルスを家族などに感染させないよう、タオルを別にする、特別な消毒液(次亜塩素酸ナトリウム)を使用するなど生活上の注意が必要です。また嘔吐を伴うことが多く、高齢者や幼児などは嘔吐物を喉につまらせたりしないように注意深く見守る必要があります。嘔吐物の処理やその後の消毒などにも十分注意しましょう。

慢性下痢症

一般的に下痢の症状が3週間以上続くと慢性下痢症と診断されます。
慢性の下痢の原因は様々です。

  • 炎症性疾患である潰瘍性大腸炎やクローン病といった病気がある場合
  • 機能性疾患である過敏性腸症候群(IBS)がある場合
  • 内分泌性疾患である甲状腺異常や糖尿病がある場合
  • 慢性腸炎、慢性膵炎、虚血性腸炎、悪性リンパ腫などがある場合
  • 大腸がんなどの腫瘍がある場合
  • その他薬の副作用の場合や、手術後の影響が出る場合
  • 消化管から吸収されにくい食物や牛乳などの飲料の影響による場合

などがあります。

慢性下痢症の場合、それぞれの原因となる疾患が隠れていることもありますので、しっかりと検査などによって原因をつきとめる必要があります。
長く続く下痢についてお悩みのことがあれば、一度当院へご相談ください。

過敏性腸症候群(IBS)について

下痢や便秘のご相談で、最近特に多い、「過敏性腸症候群」についてご説明します。
「過敏性腸症候群」というのは、炎症や潰瘍などの物理的な異常がないのに、よくお腹が痛くなったり、調子が悪いことが多く、便秘や下痢などの排便の異常が何か月も続く病気です。
「過敏性腸症候群」という名前を聞いたことがある方も増えてきました。
血液検査や内視鏡検査では異常が見つからず、またストレスが原因となることが多いと考えられています。
男性では、下痢型の方が多く、女性では便秘型が多いようです。
原因は、はっきりとはわかっていませんが、ストレスや自律神経失調などが原因となり、腸が過敏な状態になり、便通異常が起きると考えられています。
大きく3つのタイプに分けられ、

  1. 便秘型
    トイレに行ってみても、腹痛はあるもののなかなかお通じが出なかったり、コロコロとした兎の糞のようなものばかりですっきり出ないことが多いです。ストレスを感じるとより悪化することがあります。
  2. 下痢型
    よくあるのは、「会社に行く電車の中でお腹が痛くなって途中駅で降りてトイレへ駆け込んだ」、「会議中お腹が痛くなってトイレで下痢をしてしまう」などです。トイレがない場所で急激な腹痛や便意がおきて、柔らかい便や水のような下痢がでます。ひどい場合は、トイレに行けないのが怖くて電車を使えなくなってしまったり、通勤や通学が難しくなったりします。お通じが出てもすっきりしないことが多いです。
  3. 混合型
    上記の①便秘型と②下痢型があわさったタイプです。一般的に多いとされています。

があります。もともと「胃腸が弱いから仕方ない。体質かな。」と考えて我慢していた方でも、実は過敏性腸症候群の方が多くいらっしゃいます。あきらめずに一度ぜひ受診されてみてください。

下痢の検査について

下痢症状がひどい場合や、慢性化している場合など症状によっては専門医の治療が必要になることがあります。
特に慢性下痢症の場合、背後には脳の神経伝達系の異常から大腸の疾患まで、考えられる疾患は前記で紹介したようにいくつもあります。
そのため、下痢症状の背景に何か重大な疾患が隠れていないかどうか、検査をしっかり行い原因を特定することが大切です。
当院では、必要に応じた検査を行い、必要な場合は連携する医療機関を紹介させていただいております。

下痢の治療

まずは水分補給

急性下痢症は、身体から水分が大量に失われるため、脱水を起こさないよう、こまめに水分補給していくことが大切です。また水分とともにカリウムやナトリウムなどのミネラルも失われていきますので、単に水分を摂取するだけではなく、ミネラル補給も考えた給水が必要です。市販のスポーツドリンクやゼリー飲料などは有効です。ただし、冷たいまま飲むとお腹に刺激となってしまうこともあり、常温のものをゆっくりこまめに飲むことが良いです。
消化の悪い肉類や脂分の多い食物、香辛料などの刺激物やアルコール類は、症状が安定するまで控えましょう。

慢性の下痢の場合は、原因によって治療も様々です。一度ご相談ください。

薬物療法

下痢に対して薬物療法を行うときは、その原因や症状によって、様々なタイプの薬を使いわけます。当院では、漢方薬なども含めて、患者さんのタイプや症状に合わせた適切なお薬を処方しています。

下痢に用いられる主な薬は以下のように分けられます。

  • 腸の蠕動運動を抑え食物が水分を含んだまま早く通過してしまわないようにする薬
  • 腸の粘膜を整えて炎症を抑える薬
  • 腸内の細菌を殺す殺菌薬タイプの薬
  • 腸内フローラを整え腸の活動の正常化をはかるタイプの薬

など

お一人お一人に寄り添った処方をいたしますので、どうぞご相談ください。

下痢の予防

下痢を引き起こす要因としては、暴飲暴食、刺激物の過剰摂取、飲酒習慣などのほか、仕事や学業などの過度のストレス、不規則な睡眠時間、自律神経の乱れ、脳内物質分泌の異常などが挙げられます。
まずは、暴飲暴食や刺激物を避けてバランスを考えた規則正しい食生活を送るとともに、運動や気分転換、リラックス、しっかりと睡眠を取ることなどによってできるだけストレス発散、低減するようにしましょう。

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