糖尿病とは
糖尿病は、「1型」と「2型」の2種類があります。
糖尿病は、血糖値(血液の中のブドウ糖の濃度)が高くなる疾患です。簡単に言うと血管がシロップ漬けの状態になってしまうことで、早く血管が痛んでしまい、いろいろの病気の原因となります。
免疫異常などによって膵臓の細胞が壊れてインスリンが作られなくなる「1型糖尿病」と、インスリンは作られるが量が不足する、あるいはうまく機能しないために血糖が高くなる「2型糖尿病」があります。「2型糖尿病」は、はじめは内服薬、場合に応じてインスリン注射を併用して血糖を下げていきます。「1型糖尿病」の方は若い方が多いですが、どの年齢でも発症の可能性があります。すい臓がほとんどインスリンを作ることができなくなり、インスリン注射で補充することが必要となります。
原因としては、「インスリン」という膵臓から生成・分泌されるホルモンが大きく関わっていると考えられています。インスリンがたくさん作られているけれども、効き目が悪くなってしまう「インスリン抵抗性」とインスリンの量が足りなくなってしまう「インスリン分泌不全」の2種類があります。
また、隠れ糖尿病と言い、すでに糖尿病になっているにもかかわらず、健康診断などで測定される空腹時(食前)血糖値に異常がないため見逃されてしまう糖尿病もあります。このような状況にある患者さんは、健康診断などで異常がないと思って日常生活を送っていますが、動脈硬化など合併症の進行が糖尿病同様に進行している場合もあります。
いずれの場合も適切な診断と治療、生活習慣の見直しが大切になりますので、お気軽に当院までご相談ください。
糖尿病の症状
糖尿病は初期の自覚症状はあまりありません。健康診断や人間ドックなどの検査で「血糖値が高め」あるいは尿検査で「尿糖+」を指摘されることで、発見されることが多いです。
糖尿病は以下のような症状が現れやすいです。心当たりがありますか?
もしも気になる症状がございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
- ひどく喉が渇く
- 最近太った
- 健康診断や人間ドックなどで血糖高値・尿糖陽性があり指摘された
- 食べても食べても体重が減る
- 急に甘い飲食物を摂りたくなる
- 下腹部がかゆい
- 手足が痺れる
- 足がむくむ
- 頻尿、多尿
- 尿がにおう、甘い匂いがする
- 排尿した後に残尿感がある
- 立ちくらみがする
- 性欲がわかない
- やけどやケガをしても痛くない、感覚がにぶい
- 目がかすむ
など
1型糖尿病
2型糖尿病とは全く違う病気です。ある日突然自己免疫の異常が起こり、本来なら自分自身の細胞であるため攻撃しないはずのインスリンを生成・分泌する膵臓の細胞(膵β細胞)を、破壊してしまう疾患です。
原因はまだはっきりとは分かっていませんが、90%は自己免疫性、残りの10%は店員不明の突発性とされています。自己免疫に異常が起きることで本来必要な体内の細胞を攻撃してしまう、「自己免疫異常」によるものだと言われています。抗GAD抗体、抗インスリン抗体、抗IA-2抗体、抗ZnT8抗体など様々な自己抗体が陽性になります。
1型糖尿病になると、血糖をコントロールするインスリンがほとんど分泌されなくなるため、高血糖状態になります。糖尿病の典型的な症状である「口渇」「多飲多尿」「体重減少」がみられます。糖が出て行ってしまうことと、エネルギーを貯めることができなくなってしまうので、痩せていきます。重症な場合は、ケトアシドーシスとなり、意識がなくなり危機的な状態になることもあります。
1型糖尿病の治療
自力でインスリンを十分に生成・分泌できないので、治療でインスリンを補充する必要があります。自己注射でインスリンの補充を行うことで血糖値をコントロールしていけば、発症前と同じように生活を送ることが可能です。
また近年では、インスリン補充以外に「膵臓移植」「膵島移植」「人工膵島」という治療法が発達しました。さらには膵β細胞を ES細胞およびiPS細胞(ヒト多能性幹細胞)から作製し、皮下移植する再生医療や、インスリン生成ができるようインスリン遺伝子を導入する遺伝子治療などの研究も行われています。
2型糖尿病
よく「糖尿病」といわれるのはこちらの「2型糖尿病」のことです。
日本人の糖尿病患者さんのほとんど、約95%が、この2型糖尿病です。
原因は、
- 遺伝的要因(加齢やご家族の中に糖尿病患者がいる場合など)によってインスリンを出す力が低下すること
- 環境的素因(暴飲暴食してしまう、運動不足、過度の肥満、ストレスなど)によって、インスリンの効き目がわるくなってしまうこと
① と②が合わさって、インスリンが相対的に不足してしまうために発症します。
このようにインスリンの分泌量が足りなくなったり、上手く働かなかったりする状態が糖尿病です。長い間放置してしまうと、血管が傷んでしまって、たくさんの合併症が起きたり足壊疽(足に潰瘍ができて腐ってしまうこと)を起こしたりするので、QOL(生活の質)に大きく関わります。特に寿命が長くなっている今、「早めに発見し、早めに治療をすることで、糖尿病でない人と同じ質の生活で長生きできること」を目標に一緒に治療をしていきましょう。
二型糖尿病の治療法
2型糖尿病の治療は、食事療法と運動療法そして薬物療法です。
食事療法
- 食べる量は腹七分目に
- 野菜を取り入れてバランスよく食べる
- 規則正しく食べる
ことが大切です。特に食事の量が多すぎることが多いので、一度カロリー計算をしてみましょう。
1日の適切なエネルギー量は、標準体重と身体活動量から求められます。
まず標準体重を計算します。
標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
例えば、身長160cmの人では、1.6x1.6x22=56.3kgとなります。
身体活動量は、体を動かすことで消費されるエネルギー量のことです。
- 軽い動作 25~30kcal
- 普通の動作 30~35kcal
- 重い動作 35~40kcal
例えばデスクワークや家事などでは、30kcalとなります。
先ほどの標準体重56.3kgx30cal=1689kcal(およそ1700kcal)となります。
一食あたり、550~600kcalとすればよいことがわかります。
実際は、これに年齢や性別、肥満度などを考慮して決めます。
ついつい夕飯が一番カロリーが高くなりがちですが、3食同じくらいのエネルギー量で、食事の時間も6~8時間おきくらいで食べられると理想的です。
とは言っても、仕事をしているとそうもいかないので、当院ではお一人お一人に合った方法を提案していきます。
また、食事の最初に野菜を摂る方法も血糖値の上昇を緩やかにしますので良い方法です。
運動療法
運動は身体によいとわかっていながらも、現代の忙しい生活ではなかなか、、という場合も多いでしょう。
けれども、24時間血糖測定の際などに患者さんに歩いていただくと「血糖が下がった」と皆さん驚かれます。
運動の効果は抜群なのです。
特に有酸素運動とレジスタンス運動がお勧めです。
有酸素運動とは、ちょっと息が切れてるけれども会話できるくらいの強度でする運動です。ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳などがあります。
レジスタンス運動というのは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返す運動のことです。
筋肉量が上がることで、インスリン抵抗性を改善する効果が期待されます。例えばダンベル体操や水中歩行などがあります。
大体1回に20分以上続けられるようにがんばりましょう。ウォーキングの場合は、1日併せて10000歩を週3回以上できると理想的です。なかなかウォーキング習慣が身につかない方は、一駅手前で降りることが効果的です。家に帰るために、頑張って歩くことができます。
運動で消費されるカロリーは思ったよりも少ないため、運動だけで体重を減らすのはなかなか難しいです。例えば20分ウォーキングをしても消費カロリーは100kcal未満、お茶碗半分くらいです。運動をする目的は、短期的な体重減少よりも、筋肉量をアップしたり、インスリン感受性の改善をすることが目標です。また、体を動かすとリフレッシュ効果もあります。
薬物療法
※このテーブルは横にスクロール出来ます。
種類 | 作用 | 効果の特徴 | 服用のタイミング | 副作用 |
---|---|---|---|---|
スルフォニル尿素薬(SU薬) |
すい臓のβ細胞に働きかけ、数時間にわたりインスリンの分泌を促します。 血糖値を下げることが期待されます。 |
経口血糖降下薬のなかで、最もよく使用されている薬です。 特徴としては、空腹時血糖を下げやすいことが挙げられます。(服用後、食事をとらない場合に低血糖を起こしてしまう可能性があります)。 また、インスリンの分泌を促すことで、ブドウ糖を効率よく使い、体重増加が懸念されます。 なお、すい臓にインスリン分泌する機能がない場合は使用できません。 また、長期服用により効果の軽減があるとの見解もあります。 |
食前30分前、または食後 | 低血糖、体重増加 |
速効型インスリン分泌促進薬 |
SU薬と同様、すい臓のβ細胞に働きかけることでインスリンの分泌を促します。 SU薬の作用時間が数時間であることに対し、本薬の作用時間は短時間であるとされています。 |
食後血糖値の高い患者さんに使用することが多くなっています。 服用後、30分以内に効果があらわれるため、食事をとらずに服用すると低血糖の懸念が生じます。 |
食事開始の10分前以内(1日3回) | 低血糖 |
ビグアナイド薬 | 筋肉などでのブドウ糖の利用を促進し、肝臓で糖が作られることを抑えることが期待されます。 結果として、血糖値の低下が期待されます。 |
特徴として、SU薬と比較すると血糖値を低下させる力が弱い点が挙げられます。 また、体重の増加がしにくいという点もあります。 本薬のみを使用した場合、低血糖を起こしにくいとされています。 |
食後 | 低血糖、胃腸障害、乳酸アシドーシス |
チアゾリジン薬 |
筋肉や脂肪などでインスリンの効果を高め、血液中からブドウ糖の多く使われるようにする効果が期待されます。 また、結果として血糖値の低下が期待されます。 |
低血糖を起こす可能性が低い薬です。(インスリン抵抗性改善薬と言われることもあります。) なお、服用中にむくみや体重増加が見られることもあります。 |
食後 | 低血糖、体重増加、むくみ、肝障害 |
DPP-4阻害薬 |
インスリンの分泌を促すGLP-1というホルモンの働きを高めます。 ※食事とともに小腸から分泌が促されます。 |
小腸から分泌されるインクレチンというホルモンに作用する薬です。血糖値が高い時だけ作用し、インスリン分泌を促すことが期待されます。 低血糖を起こしにくく、SU薬に見られるような体重増加も起こりにくいとされています。 |
1日1回 | 低血糖、胃腸障害 |
α- グルコシダーゼ阻害薬 |
小腸でのブドウ糖の分解、吸収を遅らせる効果があるとされ、食後の急激な血糖値の上昇を抑える効果が期待されます。 | 食前はあまり血糖値が高くなく、食後に血糖値が上がりやすい方に適しています。 本薬のみ使用した場合、低血糖を起こしにくいとされています。 なお、低血糖を起こすことが懸念されます。低血糖を起こしたときにはブドウ糖を摂取しましょう。 |
食事の直前 | 低血糖、お腹の張り、おならの増加 |
SGLT2阻害薬 |
尿から糖分の排出を促進させます。 結果として、血糖を下げる効果が期待できます。 |
腎臓の近位尿細管でブドウ糖の再吸収を抑制し、尿から糖分の排出を促進させます。 比較的新しい薬になります。 なお、体重減少が懸念されます。 |
1日1回(朝食前または朝食後) | 低血糖、尿路感染症 |
かくれ糖尿病
「かくれ糖尿病」という言葉は聞いたことはありますか?
これは、健康診断では糖尿病と見抜けないタイプの糖尿病で、空腹時の血糖値は正常値にもかかわらず、食後の血糖値が糖尿病患者さんと同じくらい高値となる状態を指します。
通常、糖尿病は、「空腹時血糖値」または「食後血糖値」が基準値よりも高いときに診断されます。しかし、健康診断などで測定するのは「空腹時血糖値」のみなので、「食後血糖値」だけが高い糖尿病は見逃されやすいです。この食後血糖値だけが高い糖尿病のことを、「かくれ糖尿病」といいます。
健康な人でも食後は血糖値が上昇しやすいのですが、インスリンが分泌されるので、時間が経過すると元通りになります。しかし「かくれ糖尿病」の場合は、食後に血糖値が上昇したあと、インスリンの分泌が遅れてしまうために、食後血糖が大きく上がってしまいます。さらに肥満があると脂肪細胞にはインスリンの働きを妨げる物質が作られてしまうので、より血糖が上昇しやすくなります。
気づかれずに治療をしないまま何年も経過してしまうと、糖尿病の合併症である(しめじ:神経障害、網膜症、腎障害)が出てきます。また健康な人の3倍、心筋梗塞や脳梗塞が発症しやすくなることもわかってきました。
インスリンの分泌が遅れてしまうのは、糖尿病の家族歴のある方に起きやすく完全に予防することは難しいですが、脂肪を減らすことは生活習慣の改善で可能です。ご家族に糖尿病の方がいらっしゃったり、時々血糖が高いなど気になることがございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
かくれ糖尿病も早期発見・早期治療が大事です
「かくれ糖尿病」が進行すると「空腹時血糖値」も上昇し続け、やがて糖尿病へ移行します。特に食後の高血糖があると動脈硬化が進行してしまい様々な合併症が起きやすいことがわかっています。糖尿病の完治は難しいですが、「かくれ糖尿病」は、早くに気が付いて、早く適切な治療を受けることで悪化を防ぐことができます。そのため、健診結果のみで安心せず、早期に発見することが重要です。
「空腹時血糖値」が100mg/dL以上、またはHbA1cが5.6%以上(国際標準地)の場合は、「かくれ糖尿病」の疑いがあります。また、なぜか尿糖が陽性になるといった方も「かくれ糖尿病」の疑いがあります。疑いのある方はまず、「食後血糖値」の検査を受けることをお勧めします。さらに、ブドウ糖負荷試験(ブドウ糖が含まれた水を飲み、飲んだ30分後、1時間後、2時間後などに採血検査を受け、血糖値を測定する検査です)を受けると、より正確な糖尿病の確定診断ができます。ご希望の方は当院までお気軽にご相談ください。