皮膚科

皮膚は「人体最大の臓器(成人の皮膚の平均面積は1.6㎡)」と言われている器官です。皮膚疾患は、蕁麻疹や皮脂欠乏性湿疹、アトピー性皮膚炎、乾癬、ニキビ、水虫、イボなど、多岐にわたります。また、毛髪や爪に発症する疾患も、皮膚疾患として扱われます。
当院では、皮膚のトラブルに対して広く診察いたします。専門的な治療が必要な場合には、必要に応じて高次医療機関へご紹介をしております。

アトピー性皮膚炎

かゆみのある湿疹が出る疾患で、症状が良くなったり悪くなったりするのが特徴です。家族がアトピー性皮膚炎やアレルギー疾患(気管支喘息やアレルギー性鼻炎など)を持っていると発症しやすい傾向にあります。原因ははっきりと解明されていませんが、ダニ・ハウスダストなどのアレルゲンや、ストレス、食生活の乱れなどが関係していると言われています。

治療法

薬物治療

外用薬・保湿剤の塗布

ステロイド外用薬やプロトピック外用薬、保湿剤などの塗り薬を塗布することで、症状を和らげていきます。ステロイドと聞くとネガティブなイメージが強いかもしれませんが、もともとは身体で分泌されているホルモンの一つで、悪いものではありません。きちんと処方に従って使用することでコントロールできるようになります。
また、皮膚が乾燥すると、皮膚が本来持っているバリア機能が低下して、外界からの刺激を受けやすく、炎症が起きやすくなります。保湿剤は皮膚の乾燥を防ぐために、繰り返し塗布すると効果的です。

内服薬の服用

抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬、免疫抑制剤などを処方します。

注射

外用薬や内服薬などの治療を行っても症状が緩和されない場合は、皮下注射を定期的な皮下注射療を行います。専門医をご紹介いたします。

皮膚を清潔にする

皮膚についた汗や汚れなどを落とさずに過ごすと、症状が悪化してしまいます。毎日入浴し、皮膚炎を起こしている部位も含めて洗いましょう。優しく丁寧に洗い、きちんと石鹸が残らないように流してください。

症状が悪化する原因

  • 皮膚の乾燥
  • ハウスダストやダニなどのアレルゲン
  • シャンプーや石鹸の流し残し
  • 過度のストレス
  • 食生活や睡眠の乱れ
など

皮脂欠乏性湿疹

60代以上の男性などで、急にカサカサしてきた、かゆくなってきたと相談が多い湿疹です。
皮脂や水分の減少が起きると、皮膚は乾燥し、かゆみを伴います。乾燥してかゆい部分をかくことで炎症が起き、湿疹を引き起こしてしまう疾患を、皮脂欠乏性湿疹と呼びます。
高齢者に多く見られる疾患ですが、若年層でも発症します。特徴として、冬になると悪化しやすく、夏になると軽減する傾向があります。

治療法

保湿剤を塗布することで、乾燥を和らげます。湿疹が発生している場合は、ステロイド外用薬も一緒に塗布する必要があります。塗る量がポイントですので、しっかり指導をします。
また、身体を洗う時はゴシゴシ洗わず、石鹸を泡立てて、柔らかいタオルや手で優しく洗うようにしましょう。

脂漏性皮膚炎

脂漏部位(しろうぶい:皮脂の分泌が盛んなところ)と言われている、頭皮や鼻のわき、ワキの下などの部位に起きる皮膚炎です。症状として、皮膚の赤みやフケ、皮むけ、かゆみなどが現れます。
原因ははっきりとされていませんが、皮膚に常在しているカビ「マラセチア」の異常増殖や、もともとの肌質、皮脂の分泌量が関係していると言われています。
新生児~生後3カ月の赤ちゃんや思春期以降の大人に多く見られ、赤ちゃんのほとんどは自然治癒で改善されますが、大人の場合は何度も再発する傾向にあります。

治療法

  • 入浴時には頭や顔、身体を優しく洗いましょう。
  • シャンプーや石鹸は自身の肌質にあったものを使いましょう。
  • ストレスをためずに、バランスの良い食事と規則正しい生活を心がけましょう。
  • 赤み、かゆみが起きている部位はステロイド外用薬を、ガサガサしている部位には抗真菌薬を塗布します。

かぶれ(アレルギー性接触皮膚炎)

何らかの物質が皮膚に触れることで「かぶれ」が発生します。かぶれが発生すると、かゆみを伴う赤みや水泡などが生じます。
かぶれは主に二種類あり、アレルギーの有無に関係なく誰でも発症する可能性がある「刺激性接触皮膚炎」と、アレルギー反応が起きる物質(化粧品やヘアカラー剤、ゴム、金属など)によって引き起こされる「アレルギー性接触皮膚炎」に分けられます。

検査方法

「パッチテスト」で、アレルギー反応を引き起こす物質を特定します。
必要な場合は専門機関へご紹介いたします。

治療法

  • アレルギーを引き起こす物質から、皮膚を守る生活を送りましょう。
  • ステロイド軟膏を塗布し、症状が強い場合は抗アレルギー薬を内服しましょう。

乾癬(かんせん)

白い鱗屑(りんせつ:頭皮で見られる鱗屑は一般的にフケと呼ばれています)ができたり、皮膚の赤みが発生したりする、慢性的な皮膚疾患です。
全身に発生しますが、特に頭の生え際や肘、膝、腰など、外部からの刺激に当たりやすい部位に発生する傾向があります。また、爪に乾癬が起きると、爪の凹みや白濁が発生します。

治療法

薬物療法

ステロイド軟膏、ビタミンD3軟膏などの塗り薬を塗布します。
また、外用薬だけでは症状の緩和が難しい場合は、アプレミラストやレチノイド、シクロスポリンの服用を行うことがあります。

光線療法

外用薬の塗布を継続しながら、紫外線を当てる光線療法を行うこともあります。
必要な場合は専門機関へご紹介いたします。

注射

薬物療法と光線療法を行っても改善されない場合は、生物学的製剤(注射薬)を用います。必要に応じて大学病院等もご紹介させていただいております。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

手のひらと足の裏に小さな膿疱がたくさん発生し、赤みや鱗屑(りんせつ)も伴う皮膚疾患です。
原因ははっきりとされていませんが、喫煙者が発症しやすい傾向にあります。また、扁桃炎や虫歯、副鼻腔炎、中耳炎などの発症や、口腔内の歯科金属からくる金属アレルギーも、掌蹠膿疱症と関係しているのではないかと言われています。
掌蹠膿疱症患者様の約10%が、胸の関節痛(胸肋鎖骨間骨化症)を合併していると言われています。

治療法

薬物療法

ステロイド軟膏やビタミンD3軟膏の塗り薬を塗布します。

光線療法

薬物療法を継続しながら、紫外線を当てる光線治療も実施します。

その他注意点

  • 喫煙している方の場合、必ず禁煙してください。
  • 虫歯を持っている方は、虫歯の治療も行いましょう。

ニキビ(尋常性ざ瘡)

思春期の男の子、女の子にとても多い病気です。当院でも患者様のお子様が「ニキビがひどくなってしまって」とご相談を受けることがよくあります。ホルモンのバランスが思春期は激しく変わるので、その影響が考えれています。「お医者さんが怖い」とかなり悪化してしまってからいらっしゃる方も多いです。優しく対応しますので、ぜひ一度早めにご相談ください。
毛穴に皮脂が詰まり、アクネ菌が増殖することで炎症が引き起こされる皮膚疾患です。顔(おでこや鼻、顎など)や背中、胸など、皮脂が多く分泌されやすい脂漏部位に発生する傾向があります。思春期に多いのですが、思春期以降の成人でもニキビは現れます(大人ニキビ)。
ニキビは慢性疾患ですが、適切な治療をコツコツ続けることで、お肌を良くすることができます。

治療法

  • バランスの良い食生活を心がけ、睡眠をきちんと取りましょう。
  • 顔はゴシゴシ洗わず、優しく洗ってください。
  • 重症度に合わせて、抗菌薬や過酸化ベンゾイルなどの外用薬や、抗菌薬やビタミン剤など内服薬を処方します。

水虫

足の皮がむけたりかゆくなったりしたら水虫の可能性があります。
白癬菌(はくせんきん)というカビが足に感染した状態を「水虫(足白癬)」といいます。水虫は主に「趾間型」「小水疱型」「角質増殖型」に分類されます。
白癬菌は足以外の部位に感染することもあり、爪に感染した場合は「爪白癬」と呼ばれます。爪白癬にかかると、爪が白濁したり崩れやすくなったりします。

検査

皮膚や爪の一部を採取し、顕微鏡で白癬菌の有無を確認します。検査結果は数分程度で分かります。

治療法

  • 症状に合わせて、塗り薬や飲み薬を使い分けていきます。
  • 塗り薬を処方する場合は、塗り方の指導も行います。

イボ(疣贅)

尋常性疣贅

手指や足の裏に発生するイボを「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」といいます。子供から大人まで幅広く発症し、タコ・ウオノメと間違われやすいです。ヒトパピローマウイルス(潜伏期間:3~6ヶ月)の感染が原因で発症し、放置すると広がってしまいます。
主な治療法は塗り薬やヨクイニン内服などの薬物療法と、液体窒素による凍結療法です。

水イボ(伝染性軟属腫)

ポックスウイルスの感染により生じるイボで、乳児~小児期の子供が発症しやすい傾向にあります。人から人への接触で感染すると言われています。治療は、トラコーマ攝子というピンセットで摘除する方法で行います。

老人性イボ(脂漏性角化症)

中年以降の年代の方に多く見られるイボで、顔や頭、身体に現れやすいです。褐色のイボで、シミから隆起してくる傾向があります。必ずしも治療する必要はありませんが、凍結療法や手術で摘除することもあります。

顔の小さなできもの

稗粒腫(はいりゅうしゅ)

直径1~2mmの、白色の丘疹(きゅうしん:皮膚が小さく盛り上がった状態)です。中には白色の角質が入っていて、目の周りにできやすいです。

汗管腫(かんかんしゅ)

直径1~3mmの、肌色の丘疹が発生する疾患です。目の周りによくできます。自覚症状は乏しく、悪性化することはありません。

エクリン汗嚢腫(かんのうしゅ)

エクリン汗腺が増殖することで、顔に直径2~3mmのブツブツしたものが発生する疾患です。原因は不明ですが、夏に悪化する傾向があります。

帯状疱疹

「帯状疱疹になってしまった」と時々周囲でも聞かれるのではないでしょうか?
身体の左右どちらかに、帯状にぷつぷつと水疱ができて、痛みを伴います。
これは、加齢やストレス、疲労、免疫低下などによって、体内に潜んでいた水疱瘡のウイルスが再び活動をはじめ、神経を伝わって皮膚に到着することで発症する疾患です。
50代以上に多い病気ですが、ストレスが強いときなど若い方でも発症することがあります。
体の片側にピリピリとするような痛みと、赤い斑点、小さな水ぶくれが帯状に現れるのが特徴です。痛みは次第に強くなり、顔にも水疱ができる時もあります。
顔に発症すると、顔面神経麻痺や聴力障害などの合併症が生じる危険性があるのでワクチンで予防することがとても大切です。帯状疱疹の後何年も神経痛に悩まされてしまう方はたくさんいらっしゃいます。

治療法

ウイルスの増殖を抑制させる内服薬を服用します。早期治療を行うことで、合併症や後遺症のリスクを抑えることができます。できるだけ早めに来院ください。

予防接種(ワクチン)

帯状疱疹の発症がない50歳以上の方は、予防接種を受けることを推奨します。

帯状疱疹ワクチン

口唇ヘルペス

唇または唇周辺に水ぶくれが生じて、ピリピリした痛みが起きる疾患です。
単純ヘルペスウイルスの接触感染が原因で、ストレス、体調不良などで免疫力が落ちることで、再発することが多いです。

治療法

  • 抗ウイルス薬の外用薬・内服薬で治療します。
  • 再発を繰り返す場合は、予防内服を行います。

とびひ(伝染性膿痂疹)

皮膚に細菌が感染することで起きる疾患です。水ぶくれや、かさぶたを伴うびらんが発生します。伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)が正式な病名ですが、症状が火事の飛び火のように広がることから、「とびひ」とよく呼ばれています。
原因菌は主に、ブドウ球菌や溶血性レンサ球菌などです。

治療法

症状が軽い場合は、抗菌薬の外用で治療します。また、必要に応じて、内服薬も併用して治療を行っていきます。入浴を毎日行い、タオル・衣服は他人と共有しないようにしてください。
人に触れることで症状の悪化や他人にうつしてしまう恐れがあるため、プールは完治するまで避けてください。

できもの

できものは「粉瘤」「脂肪腫」「母斑」「ほくろ」などがあります。まずはご相談ください。

やけど(熱傷)

熱によって、皮膚に損傷が起きる疾患です。高温のものに触れることで発症するイメージがありますが、湯たんぽやカイロなど、40℃~50℃程度の温かいものに長時間接触し続けることで引き起こされるやけど(低温やけど)もあります。
重症度は、やけどの深さ(1度熱傷、2度熱傷、3度熱傷)によって異なり、3度熱傷になると、手術が必要になる可能性があります。

治療法

  • 発症したらすぐにやけどした部分を冷却しましょう。
  • 治療法はやけどの重症度によって異なります。特に広範囲のやけどや、重度のやけどは早急に救急に対応している専門病院を受診してください。

円形脱毛症

円形または楕円状の脱毛が起きる状態を「円形脱毛症」といいます。頭に多くみられ、人によっては眉毛やわき毛などに発生することもあります。
原因は諸説ありますが、自己免疫異常が関係しているのではないかと言われています。
また、円形脱毛症患者様の中には、アトピー性皮膚炎や甲状腺疾患、白斑、SLEなどの疾患を合併している方も存在しています。

治療法

ステロイド外用薬の塗布や局所注射、紫外線療法、凍結療法、局所免疫療法などで治療します。

尋常性白斑

メラノサイト(色を作る細胞)が減少することによって、肌の一部が白くなってしまう疾患です。
原因は分かっていませんが、遺伝的な要素が関係しているのではないかと言われています。
神経支配領域に沿って、白斑が片側に発生する「分節型」と、身体の左右どちらにも白斑が見られる「汎発型」に分けられます。
再発しやすい難治性疾患で、発症部位によっては社会活動に影響を及ぼす疾患です。

治療法

ステロイド、タクロリムス、ビタミンD3薬の内服、紫外線療法があります。

巻き爪

爪の角が皮膚に食い込むことで、皮膚が腫れたり痛くなったりする状態です。症状が長引くと肉芽(皮膚の盛り上がり)が生じやすくなります。
凍結療法やテーピングで治療を行いますが、爪の正しい切り方も身につける必要があります。凍結療法やテーピングなどの治療を行っても治らない場合は、手術を行うこともあります。

しもやけ

1日における気温差が10~15℃になる時期(秋~冬の初めあたり)になると発症しやすいです。気温だけではなく、遺伝的要因で発症するケースも存在しています。

治療法

ビタミンEの外用・内服やステロイド外用薬、抹消血管拡張薬の内服で、血行を良くしていきます。漢方もとても効果的なことが多いので、ぜひお困りの方はご相談ください。

水疱症(類天疱瘡、天疱瘡)

水ぶくれが発生する疾患です。先天性と後天性に分けられますが、このページでは、後天性について説明します。
後天性の水疱相は水疱性類天疱瘡と天疱瘡があり、両方とも自己免疫性疾患です。

水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう)

破けにくい水疱を生じる水疱症で、高齢者に多く見られます。皮膚だけでなく、口の中などの粘膜に発生するのも特徴です。

検査

血液検査と皮膚生検を実施します。

治療

軽度の場合は、ステロイド外用のみで治療します。必要に応じて、ニコチン酸アミド、テトラサイクリンや、免疫抑制剤なども使用します。
重症な場合は、免疫グロブリン投与や血漿交換療法が必要となり、高次医療機関へご紹介します。

尋常性天疱瘡

破れやすい水疱を生じる水疱症で、背中やお尻、口の中に発生します。
検査方法と治療方法は、水疱性類天疱瘡とほぼ同じ内容で行います。

虫刺され

蚊やブヨ、ハチ、ノミなどの虫に刺されることで、生じる皮膚炎です。症状は個人差が大きく、すぐに赤みが出て落ち着くケースと、刺されてから数日経過した後に赤みを生じるケースがあります。

治療法

ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬を処方します。
ハチに刺された場合は、アナフィラキシー反応(アレルゲン等の侵入によって、全身にアレルギー症状が発生し、命に関わる過敏反応)が起きることもあるため、要注意です。

疥癬

ヒゼンダニ(疥癬虫)に感染することで発症する疾患です。ヒゼンダニの糞や脱皮した殻などに対するアレルギー反応によって、皮膚の赤みとかゆみが発生します。
手足や陰部、ワキ下、へそ部分などに発生することが多く、直径2〜5mmの淡紅色の小丘疹が多く現れます。

感染経路

肌と肌との直接接触や、寝具や衣類、タオルなどを介した間接接触によって感染します。
潜伏期間は1~2ヵ月で、自宅や老人ホーム、病院内での感染が多い傾向にあります。

検査

顕微鏡やダーモスコピー検査で、ヒゼンダニを探します。

治療

イベルメクチンを内服あるいはフェノトリンを外用して治療します。

感染予防対策

ヒゼンダニは高温に弱く、50℃以上のお湯に10分間浸け続けることで死滅します。
また、皮膚から離れると、数時間ほどで感染力は低下します。そのため、掃除や衣類の洗濯などで、過度に気を遣う必要はありません。
しかし、タオルや足ふきマットなど、肌に直接触れるものの共用は控えてください。長時間の介助が必要な場合は、予防衣や手袋を着用し、自身を保護しましょう。

これらの皮膚疾患の治療はまず診察させていただいて、必要があれば信頼のおける専門機関へご紹介しております。 まずはぜひご相談ください。

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