便秘とは
「便秘」は、ありふれた病気でよく耳にされると思います。
病気ではないと思ってしまう方も多いですが、便秘はれっきとした病気です。
女性に多いですが、年齢を重ねて80歳以上になると男女差はなくなっていきます。 便秘の定義をみてみましょう。
実は、便秘は2日間おきの方でも便秘ではない方もいれば、毎日でていても便秘の方もいるのです。
「3日以上便が出ない」「排便しても便が残った感じがある」状態を「便秘」と言います。
慢性便秘症診療ガイドライン2017では、「本来体外へ排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と提起されています。
つまり、何日に1回というよりは、自分で「快適にお通じが出ていないな」と思ったら「便秘」なのです。 「強くいきまないと排出されない」「下剤を服用しないと出ない」、「便秘と下痢を交互に繰り返す」「排便してもすっきりしない」「腹痛」「お腹が張っている」などの症状も便秘の一つです。このような症状を、お一人お一人の悩みにあわせて便の状態や原因を一緒に考えながら生活指導や薬物治療で治療をしていきます。
また単に便秘症というだけではなく、便秘の背景に大腸がんや痔などのほかの病気が隠れているときもあります。お医者さんに相談するほどでもないかな、と悩んでいる方はぜひお気軽にご相談ください。
便秘が解消され腸内環境が整うと、免疫機能も改善したり、お肌の調子もよくなったり、いいことが沢山あります。
最近、以下のようなお悩みはありませんか?
- 時間をかけても便が出ない
- 出しても残便感があってすっきりしない
- 強くいきんでも少量の便しか出ない
- 肛門のあたりに固い便がある感じがするがうまくでない
- 下剤を服用しないと便が出ない
- 便秘と下痢を交互に繰り返す
- 便意をもよおさない
- 2週間以上、すっきり満足できる排便がない
- お腹の張り感や下腹部の痛み
- おならが多い、においが気になる
- 肌荒れ
便秘の原因
- トイレを我慢してしまう:排便反射の低下
- 運動不足
- ダイエットや偏食など食事バランスの乱れや少ない食事量(食物繊維不足)
- 水分不足
- 精神的ストレス
- 進学や昇進、就職、引っ越しなどの環境の変化
- ホルモンの病気(甲状腺など)
- 糖尿病による神経障害
- 消化器系の病気(クローン病、潰瘍性大腸炎、大腸がんなど)
これらの原因は一つではなく、いくつかが組み合わさって便秘を起こしていることが多いです。また、特に女性はお通じを我慢しがちなので、「行きたくなったらすぐトイレに行く」こともよい排便習慣のコツです。便意をもよおしても我慢するクセが付いてしまうと、直腸にある感覚(排便反射)が鈍くなり、便秘になってしまいます。
理想のタイミングは、「朝食を食べてから少し経過したとき」です。きちんと早起きして、トイレに行く習慣をつくることで、自然な便意が生まれ、かつ健康的な生活を送ることができます。まずは便意が起きたら我慢せずに行く習慣を作り、排便反射を鈍くしない習慣を身につけるといいですね。
また、腸内細菌叢(腸内フローラ)の働きも排便に関係します。食習慣の乱れやストレスなどで腸内細菌叢のバランスが悪くなると、便秘になりやすいです。コツはバランスよく食べることです。発酵食品や水溶性食物繊維・不溶性食物繊維の両方をよいバランスでとりましょう。
発酵食品
発酵食品とは、微生物が分解(発酵)することでできた食品です。栄養価をあげたり、食品の保存性を高めたり、何より腸内環境を整える作用があります。
- 乳酸菌:牛乳、ヨーグルト、チーズ、キムチなど
- 納豆菌:納豆
- 乳酸菌、麹菌、酵母菌:味噌、醤油、ぬか漬けなど
- 麹菌:甘酒、日本酒など
- 酢酸菌:お酢
- ワイン菌:ワイン
- ビール菌:ビール
など昔から体にいいといわれている食品が多いです。
水溶性食物繊維
水溶性食物繊維というのは、すこしとろっとしていて、ゆっくり消化されるので糖の吸収をおだやかにしたり、コレステロールを低下させる効果があります。
特に日本人は、水溶性食物繊維が不足していることが多いです。
具体的には
- βグルカン:オーツ、大麦など
- グルコマンナン:こんにゃく
- アルギン酸:海藻類 こんぶやわかめなど
- ペクチン:熟れたフルーツなど
に多く含まれています。
オートミールやシリアルなどは最近朝食にされる方が増えました。ぜひ取り入れてみてください。
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維というのは、水を吸収して膨らむので腸が刺激されて便秘の解消につながります。また善玉菌の餌になるので、良い菌が増えておなかの調子が整います。
具体的には
- セルロース:穀物、豆類、野菜
- ヘミセルロース:穀物、豆類
- ペクチン:熟れていないフルーツ、野菜
- イヌリン:ごぼう、きくいもなど
それから睡眠も侮れません。しっかり睡眠をとると次の日の朝トイレがスムーズになります。
便秘の種類
慢性便秘は、日本消化器病学会関連研究会によると、臓器に何らかの疾患が発症して起きる「器質性便秘」と、自律神経・生活習慣の乱れで起きる「機能性便秘」に分けられます。
器質性便秘
「器質性便秘」は簡単に言うと、「がんなどで詰まってしまう」状態です。
詰まっている原因を内視鏡検査やCT検査で調べる必要があります。
機能性便秘
「機能性便秘」は4つに分類できます。
弛緩性便秘
高齢の方に多い便秘です。腸全体の動きがゆっくりになってしまい、便をなかなか外へ排出できません。大腸に便があるとどんどん水分が吸収されてしまうので便が固くなります。市販薬の乱用によって大腸の動きが悪くなってしまいこのタイプの便秘になる方もいます。少しずつ刺激性下剤を減らしながらお通じを柔らかくするお薬や漢方を使用して便秘を治療していきます。
痙攣性便秘
ストレスなどによって自律神経が乱れてしまい、大腸の一部が痙攣するように強く収縮してお通じが「ウサギの糞」のように固くなります。便が出にくい感じ(残便感)がでてきたり、1週間くらい便秘になってしまったりします。「過敏性腸症候群」の便秘型のタイプも最近では増えてきました。便が固いので、柔らかくする薬を使用します。お腹の動きを整えるために、運動をしたり、お腹のマッサージをすると効果的です。
直腸性便秘
肛門の裏に固いお通じがあるようなタイプです。若い女性やあまり動かない高齢の患者さんが多いです。お通じを我慢してしまうので、便がたまっている感覚が鈍くなってしまい便秘になります。直腸を刺激するように座薬や浣腸を使うとうまく排便ができるようになります。
症候性便秘
便秘の原因になる病気がほかにある場合です。糖尿病、甲状腺機能低下症、パーキンソン病などの症状の一つとして便秘になります。元の疾患の治療が大切です。
便秘の治療「女性医師による便秘外来」
便秘の患者さんは女性に多いので、当院では女性医師による便秘外来を行っています。便秘でお困りの方はぜひお気軽にご相談ください。
便秘の薬は、昔に比べてたくさん種類が増えました。当院では漢方も含めて、患者さん「お一人お一人に一番合った処方」ができるように心がけています。
また、お薬の効き目は個人差がありますので、量の調節や体質に合うお薬を探していきます。
また、お薬だけでなく、お食事のこと、運動のことなど生活習慣についてもきめ細かくアドバイスさせていただきますのでご安心ください。一緒にご相談しながらぜひ体質改善を目指しましょう!
生活習慣の改善
- 早寝早起きと一日三食をきちんと行う、規則正しい生活をする:朝ごはんが大切です!
- 十分な睡眠と休息時間の確保
- 精神的ストレスの解消
- バランスの良い食事
- 運動の習慣をつくる
- 便意が起きたらすぐにトイレへ行く
- 身体を冷やさない(腹部マッサージを行う)
規則正しい生活をすると身体がリズムよくホルモンなど分泌を行い、体内時計が整います。朝からトイレに行けたら理想的ですが、そうでなくても、すっきりしたら便秘の治療としては大成功です。
また、腸の血行をよくするように、身体を冷やさないことも重要です。腹部のマッサージは、医師が指導をしますのでご相談ください。
食事
コツは色々なものを少しずつバランスよく食べることです。
発酵食品や水溶性食物繊維・不溶性食物繊維の両方をよいバランスでとりましょう。
どちらか一方だけだとかえって便秘になってしまうこともあります。
水分をしっかりとるとお通じが膨らんで腸を刺激するので便秘解消に役立ちます。特にミネラルウォーター(硬水)は便秘解消にもなるミネラルがたくさん含まれているので便秘の解消に役立つこともあります。
また、脂肪は摂りすぎてもいけませんが、少なすぎてしまうと腸管への刺激が減ってしまいます。脂肪も便通を良くするために必要なので、適量を摂りましょう。
運動
軽い運動を続けると血行が良くなり、また直接腸が動いてマッサージされるので、消化管の調子も整います。
1日30分のウォーキングを、週に3回以上行えたら素晴らしい!ですが、もっと簡単なお家でできる運動もご紹介しています。
投薬療法
若い女性は特にクリニックに行くのをためらって、市販薬を長い間飲んでしまうケースが多いです。市販薬(刺激性下剤)はずっと飲んでしまうと、大腸メラノーシスと言って、大腸に色素沈着がおきて、だんだん効き目が悪くなり薬の量が増えてしまうようになってしまいます。
当院では、刺激性下剤は「とっておき」にして、便の水分を調節したり、腸液の分泌を増やして柔らかくするお薬や腸の動きを整えるお薬、胆汁酸の吸収をコントロールするお薬など新しいお薬も積極的に取り入れて、お一人お一人に合った処方をしております。漢方も、体質改善を目指していくので便秘の治療にはぴったりです。ぜひ一度ご相談ください。