骨粗鬆症

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症は骨の密度がスカスカになることで骨が弱ってしまう疾患です。骨がもろくなることで、少しの衝撃を受けただけで骨が折れたりヒビが入ったりします。「軽い物を持ち上げた時」「ちょっとした段差につまずいた時」「バランスを崩した時」など、比較的軽い負荷がかかっただけで骨折してしまうようになります。
さらに重症化すると「転んだ覚えがない」「痛みがない」「無理な姿勢をとっていない」状態でも、自身の身体の重さだけで骨折を起こしやすくなります。
肥満体型ではなくても、「いつのまにか骨折していた……」というケースが発生します。骨粗鬆症は進行すればするほど骨が弱くなるので、早期発見・早期治療が重要です。

「標準整形外科より抜粋」
左から右に正常から骨粗鬆症のレントゲン写真です。骨の密度が薄くなり、右のものでは圧迫骨折も認めます。実際の骨をみてみると、正常な骨と骨粗鬆症の骨ですが、右のものでは骨と骨のつながり(骨梁)が少なくなり、スカスカになっているのがわかります。これにより強度が落ちます。

骨粗鬆症がどんな病気かというと。正式な定義では、「低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患」とされます。簡単に言うと、「全身の骨の量が減って、骨がもろくなり、ちょっとしたことでも骨折しやすくなっている状態」です。 骨はゆっくりとしか動きませんが、当然のことながら生きた組織です。常に破骨細胞という骨を溶かして吸収する細胞による骨吸収と新しく骨を作ってくれる骨芽細胞による骨形成を繰り返すことで、常に新しく作り直されています(再構成=リモデリング)。図のように骨吸収と骨形成のバランスが等しければ、骨量は保たれますが、骨形成を骨吸収が上回ると、骨が吸収され、骨量が低下し骨粗鬆症の状態となります。

近年では実際の骨の強度は、骨量(骨密度)だけではなく、骨の質、骨質を考慮する必要があるとされています。
骨粗鬆症は大きく分けて原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆症があります、続発性には内分泌性や薬剤性も含まれます。

骨粗骨粗鬆症の原因

閉経

閉経後は女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌量が減るので、骨粗鬆症の発症リスクが高まります。実際に骨粗鬆症の患者の8割は女性であり、特に更年期による「ホルモンバランスの乱れ」が原因で発症します。

栄養不足や不摂生

偏食・過度なダイエット、ヘビースモーカー、過度な飲酒、運動不足は骨粗鬆症の原因になります。骨密度が比較的高い若年層や男性が骨粗鬆症になる場合は、これらの要素が絡んでいることが多いです。

持病や服用薬

持病や「現在服用している薬」の影響で、骨粗鬆症を発症する場合もあります。関節リウマチや糖尿病、慢性腎不全などの持病を抱えている方や、ステロイドの長期服用をされている方は、骨粗鬆症のリスクが高いので、定期的な骨密度チェックとケアが重要です。

女性は骨粗鬆症になりやすい

エストロゲンはカルシウムを骨から溶け出すのを抑える働きがあります。そのため閉経後、エストロゲンの分泌量が減少することで骨密度が急激に減少します。
特に更年期を迎えると発症リスクが高まり、早い方ですと50歳代で骨粗鬆症が現れます。具体的には50代女性の10人に1人、60代女性の3人に1人、70代では2人に1人が骨粗鬆症と考えられています。
早期治療と適切なケアを行うことが重要なので、特に自覚症状がなくても、閉経後の女性は定期的に骨密度検査を受けましょう。

骨粗鬆症の診断

問診で最近のお悩みや症状についてお聞きし、必要に応じて触診や骨密度測定、血液検査や尿検査などを実施します。また、骨折で受診された患者さんの場合でも、骨折の原因に骨粗鬆症が影響しているかどうかを確認します。当院ではメディカルスキャン東京に検査依頼し、腰椎と大腿骨近位部の両者を測定していますので、正確な骨密度を測ることができます。もちろん他院での検査データがある場合は持参いただいても結構です。お気軽にご相談ください。

骨粗鬆症の予防と治療

年齢や性別、遺伝的な要因だけではなく、食事や運動などのライフスタイルも発症や進行に大きく関わっています。初期症状であれば、食事の改善や運動を行うことで、改善するケースもあります。骨粗鬆症が進行している状態・重症の場合は、投薬治療も行います。

食事療法

骨にはリモデリングという古い骨を壊し、新しい骨を作る代謝機能が備わっています。また、骨はカルシウムをはじめとしたミネラルやたんぱく質により構成されており、この代謝機能を機能させるためには、ビタミンDやビタミンKなどが必要になります。このことから健康的な骨を維持するためには、適切な食事を摂ることが重要になります。ここでは、骨粗鬆症の予防・治療に必要な1日の栄養素をお伝えします。

骨粗鬆症の予防・治療に必要な1日の栄養素

  • カルシウム:700~800mg

  • ビタミンD:400~800IU(10-20μg)

  • ビタミンK:250~300μg

※上記栄養素は他の栄養素をしっかり摂取した上での値になります。インスタント食品や加工食品などリンが多く含まれた食品、コーヒーなどカフェインが多く含まれたもの、塩分の多い食品(塩分の摂り過ぎ)、過度な飲酒、喫煙などを控え、健康的な生活を送りましょう。

運動療法

骨は負荷がかかると骨量を増やそうと働きます。そのため、運動を行うと骨がより強くなり、骨密度低下のリスクを軽減できます。また、骨を支える筋肉を鍛えることで、骨にかかる負担が軽減されます。さらに、バランス感覚を鍛えておくことで転倒防止を防ぐことができ、転倒に伴う骨折のリスク軽減に役立ちます。
特に重要なのは、背中の「いつのまにか骨折」対策になる背筋トレーニングや、膝周辺・腰の筋力を上昇させるトレーニングです。
激しい運動を行うと過度な負荷がかかってしまうので、軽めの運動(ウォーキング、水泳、散歩など)を週に3回からはじめて、習慣化することが大切です。
週3回のウォーキング、週2-3回の筋力訓練、毎日のバランス訓練のどれかを継続して行えた場合は、骨折予防の効果がより期待できることが研究などでも示されています。

薬物療法

食事療法・運動療法を行っても十分な改善が見込めない場合は、骨吸収抑制剤、骨形成促進剤、ビタミンD、ビタミンKなどを処方しています。定期的な検査や「現在、患者さんが服用している薬」「既往歴」に合わせて、一人ひとりに合った薬を処方します。

ビスホスホネート(代表薬剤名:アレドロン酸、フォサマック、ボナロン、ボンビバ、リセドロン酸、アクトネル、ベネット、リカルボン、ボノテオ、リクラスト)

骨を吸収する破骨細胞の働きを抑えて、骨が減ることを抑制する骨吸収抑制剤の代表的なものです。ある程度進行した骨粗鬆症の場合、最初の治療に用いられることも多い薬です。空腹時に内服しないと効果が弱くなってしまうので、朝いちばんでの服用をお勧めしています。 なお、週1回飲めばよいものと、月1回飲めばよいものがあります。効果は同じです。 骨の中に蓄積される性質があり、6-8年で効果が弱くなってくるので、定期的に検査を行い、効果が弱くなってきたら、別の薬への変更も相談していきます。

SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーターの略称 代表薬剤名:ラロキシフェン、エビスタ、ビビアント)

50代以降に減少する女性ホルモン(エストロゲン)を選択的に補充する薬です。女性ホルモンを補充する治療もあり、骨粗鬆症治療に関しても非常に良い成績ですが、骨以外の臓器への影響もあるため、骨粗鬆症に関係する部分に選択的に作用するように改良された薬剤です。本来の目的とはズレますが、乳がんの抑制効果もあります。骨量の上昇効果は前述のビスホスホネートには劣りますが、骨の質(骨質)改善効果もあり、比較的早期の女性に処方するケースが多い印象です。

活性型ビタミンD(薬剤名:アルファカルシドール、カルシトリオール、エルデカルシトール)

本来ビタミンDは食事などから摂取したり、日光浴などによって皮膚で生成された天然型ビタミンDを体内で活性化しますが、すでに活性化されたものを内服することで、効率よく取り入れることができます。
予防的に、この薬のみで使用することもありますし、他の薬と併用して使用することもあります。予防から治療まで幅広く使用する薬剤です。エルデカルシトールに関しては、単独でも骨密度上昇効果を認める優秀な薬ですが、腎臓への影響があるため、定期的なフォローが必要です。
通常、サプリメントなどに入っているものは天然型ビタミンDになります。

カルシウム製剤

骨量の維持のためには1日当たり通常700~800mgのカルシウムが必要と言われています。
治療に関してはさらに必要ともいわれており、食事のみから必要なカルシウムをとることは難しく、カルシウムが低い場合は前述のビタミンDかカルシウム製剤(もしくは両方)が必要になります。
ただし、カルシウムに関しては多すぎても、動脈硬化などの問題になることがあり、定期的な検査が必要です。特にサプリメントの摂取による高カルシウム血症は問題となっています。
カルシウムは人によって、吸収される量や代謝が異なるため、自分で判断せずに専門家のいる当院にご相談ください。

抗RANKL抗体薬(プラリア)、PTH製剤(フォルテオ、テリボン、テリボンオートインジェクター)、ロモソズマブ(イベニティ)

重症な骨粗鬆症の治療に用いられる薬剤で、注射製剤がメインとなります。骨折リスクが高い方には比較的早期から使用することで、その後の骨折リスクを大幅に軽減できる可能性があります。適応や使用に注意を要するものもありますが、当院は骨粗鬆症認定医がおり、また内科と併設のためぜひご相談ください。

「いつのまにか骨折」の自覚症状はないことも

通常の骨折は激しい痛みが発生する傾向にありますが、骨粗鬆症による骨折はほとんど痛みがなく、自覚症状に乏しいです。加齢によって「背中・腰が曲がる」「身長が縮んだ」「腰が痛い」症状が現れた時は、「いつのまにか骨折」を発生しているケースがよくあります。「いつのまにか骨折」は、通常の骨折のように、折れる・ヒビが入るだけではなく、重みでつぶれる圧迫骨折を引き起こすことが多いです。

 「いつのまにか骨折」の悪循環を止めましょう

前述したように、骨粗鬆症による「いつのまにか骨折」は自覚症状に乏しいので、放置しがちになります。無自覚なまま圧迫骨折を放置してしまうと、周辺の骨にも負荷がかかり、巻き込まれることで次々と骨折しやすくなります。「いつのまにか骨折」は寝たきりの原因にもなり、健康寿命に大きく関わります。「いつのまにか骨折」を防ぐためには、定期的に骨密度検査をうけて早期発見に努めましょう。

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